第六十九回

  

 昭和五十七年春、福岡'82大博覧会が大濠公園で開催されることになり、そこで昔の博多の街並みを再現したらいかがかと提案しました。

 お年寄りには懐かしい思い出を、若者や子供たちには消え去った古い物の中から新しい何かを探し出してもらったらという、名付けて「博多思い出通り」です。設計は、私が以前RKBテレビに出演していたとき、舞台装置を作ってくださった中島勉さん。相談に行くと「わかった!任しとき」とわが意を得たりの一言です。

 これは単に古い風景を会場の一角に再現するだけではなく、従業員も昔の姿で、実際に営業してもらうように考えたのです。ところが、いろいろ計算してもらいますと、入居権利金、人件費なども入れると、そう「お遊びごと」ではやれそうにないのです。

 そこをなんとか協力してくれませんかと、出店していただけそうなお店の勧誘にも回りました。わざわざ便利の悪い店をつくって、もうからんでっしょうが、博多の心意気にご賛同を、という熱意が通じてか、有り難いことに二十余軒の店を出していただくことになりました。

 木造の骨組みも出来上がったところで、魔よけの幟(のぼり)を立て、三味線、太鼓に合わせてついた餅を、赤鉢巻きで木組みの上からまく「上棟式」もキチンとすませました。やがて屋根瓦に、格子戸、のれん、すの子、ランプ、工夫を凝らした昔の博多の町並みが再現されました。

 大福うどん(熊本章一社長)ぜんざいの佐衛門(田中治雄社長)しょうちゅう屋さん(天盃の多田雅信社長)博多駅弁棟のしにせ寿軒(末永直行社長)。博多織はトントンと製作実演です(讃井勝美社長)。

 写真館では鹿鳴館時代の衣装を着た女性と並んで、マグネシウムをボッ!とたいての撮影。赤い郵便ポストがある郵便局前の交番所にはピンと八の字ヒゲをつけ、ピカピカ光るサーベルを下げたおまわりさん。金魚売りさんの声も聞こえます。天神さまの祠(ほこら)もあります。「つぼ焼き芋」屋さんがプーンと芋の焼けるにおいをまき散らします。

 私たちは、町内会事務所に、それぞれ数日おきに顔を出すという毎日でした。


博多思い出通りのポスター(昭和57年作)

(1993年 画家 著書より)


  

 

   
  


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