第六十回

  

 やすらぎ荘が開設されたころ、福岡県で観光映画を作る話が持ち上がり、当時西鉄社長で福岡県観光連盟会長であった楠根宗生氏が観光審議会の席上で「これは西島さんにまかせて風変わりな映画を作ってもらいまっしょう。これまでの名所旧跡を並べた絵はがきの羅列のような観光映画ではなく、理屈抜きに誰が見ても楽しい映画を作ってください」と言われたのです。

 そのころの私は伴淳さんと親しかったので「そんなら素人ですが、あらましの筋書きとして東北から出てきたおじさんが驚いたり、笑わせたり、失敗しながら福岡県を回るというドラマ方式でやらしてもらいまっしょう」ということになりました。

 題名もぐっとくだけて「よかとこ福岡」という、当時は余り使われていなかった方言でのスタートです。

 制作はRKB映画社で、カメラは村田敏之企画部長でした「とにかく絵はがき的なカット入れんごとして、自然な姿を撮影しまっしょう」ということで意気投合しました。

 太宰府天満宮の菖蒲池では、亀がポッカリ首を出したところが焦点。元寇防塁砂浜では、カニと子供を遊ばせるだけ。芥屋の大門も、ドブンと飛び込んだスキンダイバーがしばらくたって海面に頭を出したところに、ひょいとマイクを差し出して海底の話を聞く。

 柳川を静かな詩情で表現するだけでなく、「あにぎえ」の御輿(みこし)が川っぷちを練っていく情景に川下りの舟をダブらせる。正調博多節を踊る芸者さんが次第に博多人形になってしまったり、フグ刺しも高級品でなくて一皿二百円の値札がついた市場のフグ刺しを撮る・・・といった具合です。


観光ポスター(昭和42年作)

(1993年 画家 著書より)


  

 

   
  


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