第五十七回

  

 佐賀大学では、一週一回で月に四回の講義。一万円ぐらいが前期の給料でしたから、皆勤すると交通費(佐賀駅からはタクシー)だけでも赤字だったように思います。私の講義は実技だけですので、理屈抜きの指導方法で一日教えたら、あと何を話したらよいか分かりません。

 そもそも絵をかく要領はあまり教えすぎるとみんな同じような絵になってしまうので、教えない方が良いような気もします。絵をかく前に「恥をかけ」とか、左手でかく、逆さにかく、空間をかく、など登校中の汽車の中で思いついたままのことをしゃべったりしたものです。

 動物や鳥などは生態から考えたほうが描きやすい。例えばワシは猛禽(もうきん)類で、空からウサギやネズミを狙うので目とくちばしが鋭く、羽は大きく張る。鶏は地面を歩くから羽は小さく、足は大きい。キリンは長い首を支えるため胸を前に張り、しりをグンと落とす・・・など、やっぱり小学校程度ですかな。

 大切なのは物事への感動、注意力、粘り、優しさ・・・「あとは自分で考えれば分かろうもん」という調子です。

 授業が終わって、時々学生たちと飲みにも行きました。中州のクラブなどに行くと学生たちは大喜びです。ちょうどその店に、当時黄金時代だった西鉄ライオンズの大下、中西、豊田といったスター選手が顔を見せており、私にも親しそうにあいさつするのを学生たちは見て、急に尊敬のまなざしになったりもします。

 酒の席では先生も学生もありませんから、みんなで飲んで食って大騒ぎでしたが、当時の学生が「西島先生は私たちの青春そのものです。こげな人間くさい、心の熱い先生は豊田勝秋と西島伊三雄以外に知りません」と手紙をよこしてくれていますが、あのころは私も若さいっぱいでした。

 思い出しましたが、その頃中西太さんに、もし西鉄が日本一になったら球団のマークを新しく西島さんに考えてもらいましょうかと言われました。冗談とは思いながらも考えたのは、西洋の紋章の中のライオンを私なりにN字にデザイン化したもので、それが後に現在の西鉄グランドホテルのマークに採用されたのです。


西鉄グランドホテルのマーク

(1993年 画家 著書より)


  

 

   
  


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